ソニー生命の『メディカル・ベネフィットリターン』は、使わなかった保険料が、将来自分に手元に返ってくるタイプの保険で、近年では医療保険の中にこのようなタイプの商品が増えつつあります。
しかし少し前までは医療保険といえば「掛け捨て」が中心でした。
つまり病気にならなかったら保険料は全て無駄になるということです。
もったいないと思う人も多いのではないでしょうか。
そこで最近では、使わなかった保険料が返ってくるタイプの医療保険が評判を高めつつあります。
その中の一つ、ソニー生命の『メディカル・ベネフィットリターン』もそうしたタイプの商品です。
ここでは、代表的な競合商品である東京海上日動あんしん生命『メディカルキットR』とメディケア生命『メディフィットリターン』と比較して、そのメリットとデメリットを見ていきたいと思います。
また資産運用を意識した、ソニー生命の「メディカル・ベネフィットリターン」の運用シュミレーションなどもご紹介いたします。
比較対象となる他社と似たような商品名なのでまとめておきます。
会社名 | 商品名 |
ソニー生命 | メディカル・ベネフィットリターン |
東京海上日動あんしん生命 | メディカルキット(Kit)R |
メディケア生命 | メディフィットリターン |
ソニー生命「メディカルベネフィットリターン」の仕組み
まずはソニー生命の「メディカル・ベネフィットリターン」の仕組みについて解説します。
メディカルベネフィットリターンは、ベースとなった同社の『メディカルベネフィット』と保障内容はほとんど変わりません。
メディカルベネフィットリターンは「使わなかった保険料が返ってくる」ということで、これは他社の2商品とも特性は同じです。
簡単に図で表現すると、このようになります。
この図の通り、加入からずっと健康で1回も入院などしなかった場合は、返ってくる保険料がもっとも大きくなります。
ソニー生命の「メディカルベネフィットリターン」を途中解約
従来の掛け捨てタイプの医療保険は、途中で解約しても1円も返ってきませんが、メディカルベネフィットリターンは途中解約または被保険者が死亡した場合に、解約返戻金(死亡給付金)が出ます。
これは他の医療保険とは異なる大きなメリットです。
では、どのような場合に解約返戻金(死亡給付金)が出るのでしょうか?
解約返戻金(死亡給付金)が出る場合
まず契約の際にあなたが健康還付給付金を受け取る年齢を決めます。
ソニー生命の「メディカルベネフィットリターン」では、50歳から80歳で5歳刻みで受け取れる年齢を決めることができます。
しかし何かの事情で、途中で解約しなくてはいけなくなった場合
健康還付給付金を受け取る前であれば解約返戻金が受け取れ、もしくは死亡の際には死亡給付金が支払われます。
但し受け取れる金額は、それまでに支払った保険料が全額返ってくるのではないので、注意が必要です。
例として、35歳男性、保険期間・保険料支払い期間とも終身、保険料は4,610円/月、健康還付給付金の支払い年齢を65歳の場合
経過年数 | 保険料累計(円) | 解約返戻金(円) | 死亡給付金(円) | 健康還付給付金 |
5年 | 276,600円 | 144,956円 | 156,815円 | ー |
10年 | 553,200円 | 327,245円 | 327,245円 | ー |
20年 | 1,106,400円 | 731,940円 | 731,940円 | ー |
30年 | 1,659,600円 | 1,283,385円 | 1,283,385円 | 1,659,600円 |
このように30年後の健康還付給付金の支払い年齢前に解約すると、支払った保険料より少なくなります。
解約返戻金(死亡給付金)が出ない場合
健康還付給付金を受け取った後に、あなたが解約または死亡した場合、解約返戻金(死亡給付金)は1円も出ません。
もしくは入院などをによって受け取った各種給付金が、あなたが支払った保険料より多くなった場合も出ません。
健康還付給付金を受け取った後は、一般的な掛け捨てタイプの医療保険と全く同じになります。
ソニー生命の「メディカルベネフィットリターン」のメリット
通常の医療保険よりお得
主契約保険料の使わなかった部分が返ってくるので、健康で過ごせば過ごすほどお得になります。
仮に主契約部分を一切使わなかったとすれば、負担するのは特約保険料だけになるので、その意味ではお得と見ることができるでしょう。
健康増進意識の醸成
リターン系の医療保険に加入する人の多くは、将来の受取金額をできるだけ大きくしたいと考えますから、一般的には入院が必要な事態にはならないよう気をつけながら生活します。
これは、最終的な保険料負担を小さくすることにもつながりますが、その他にも、暴飲暴食や喫煙をやめたりなど、普段は可視化しないような費用を抑制することができます。
ソニー生命の「メディカルベネフィットリターン」のデメリット
返ってくる保険料の範囲
メディカルベネフィットリターンを含めリターン系の商品について、悪質な生命保険募集人(営業マン)の説明や断片的な情報しか載せないブログには「1回も入院などしなければ、保険料が「全額」返ってくる」という文言が踊ります。
本当に注意すべきデメリットはこの点で、本当は「全額」返ってくることはありません。
厳密には「使わなかった主契約の保険料が返ってくる」であって、特約部分は掛け捨てであることに注意が必要です。
メディカルベネフィットリターンの現行のパンフレットP6右下にも、注意書きが書いてあるのでよくご覧ください。
その注意書きには「健康還付給付金の計算に特約の保険料および給付金は含みません」とあります。
つまり、特約保険料は「一切」返って来ず、従って払込保険料総額が全額返ってくるようなことはありえません。
逆に、特約の給付金をいくら受け取っても、健康還付給付金には影響しないとも言えます。
ここで、メディカルベネフィットリターンに付加できる特約を見てみましょう。
特約 | 主な用途 |
特定疾病診断給付金特約 | 初めてがんと診断確定されたとき、または急性心筋梗塞・脳卒中により所定の状態と診断されたときに一時金が支払われる |
入院一時金給付特約 | 短期入院に備えるための一時金 |
三疾病入院給付特約 | 主契約の「三疾病(がん・心疾患・脳血管疾患)給付金の上乗せ |
先進医療特約 | 病気やケガで先進医療を受けた際の、技術料相当額を保障 |
女性特定手術給付特約 | 女性特定部位の治療で主契約の手術給付金が支払われた際に、主契約に上乗せして支払われる |
抗がん剤治療特約 | がん治療を直接の目的として抗がん剤治療を受けたときに給付 |
いかがでしょうか。
あまり複雑な特約はないのですが、オーソドックスでいずれも軽視しづらい特約が並んでいます。
これらの特約のために支払った保険料は、被保険者がいくら健康でいても、1円も返ってきません。
ちなみにこれは、競合商品のメディカルキットRやメディフィットリターンも同じなので、同商品だけのデメリットではないかもしれません。
資産運用の効果はゼロかマイナス
この手の商品を貯蓄の代わりに使うことは考えない方が良いでしょう。
先ほど見たように、使わなかった保険料の主契約部分しか返って来ないので、通常の医療保険に比べればお得なだけで、一切入院などしない健康な人であっても特約を付加した時点で「赤字」確定です。
健康還付給付金を受け取った後の保険料負担が大きい
保険料払込期間の選択肢は、リターン系のほとんどの商品が「終身払い」です。
健康還付給付金を仮に65歳で受け取った場合、その後15年~20年を生きると考えると、一般的な医療保険よりも割高な保険料を一生涯にわたって払い続けることになります。
メディカルベネフィットリターンでは、≪入院日額5,000円、1入院の支払い限度120日、健康還付給付金70歳≫というプランで加入すると、30歳男性で毎月3,620円の保険料になります(※あくまで主契約のみです)。
保険料の支払いは40年間で173万7,600円です。
何事もなければこの金額が返ってきますが、例えばその後15年間生き続けるのであれば、更に65万円余りを支払うことになります。
特約を付加すれば、特約保険料が乗ってきますから、健康還付給付金を考慮しても総額100万円以上の保険料負担は覚悟した方がいいでしょう。
60歳くらいで健康還付給付金を受け取ってから途中解約して、掛け捨てタイプの医療保険に加入しなおすという選択もあります。
しかし60歳以降の高齢で医療保険に加入しなおすと、そもそもの年齢が高いために保険料も高くなりがちです。
年末調整
年末調整において、通常の医療保険は死亡保険とは別に「医療保険料控除」の枠に入り、年間4万円を上限に所得から控除されます(=税制上の優遇を受けられる)。
しかし、メディカルベネフィットリターンを含め保険料が返ってくるタイプの医療保険は、死亡保険と同じ枠の「生命保険料控除」の枠に入ります(*)。
つまり税制上のメリットが少し小さくなります。
*保険商品によっては、主契約だけが「生命保険料控除」、特約は「医療保険料控除」という具合に区分が異なる場合もあります。
ソニー生命の「メディカルベネフィットリターン」の評判
ここまでご覧になって、デメリットが目立つと感じた方も多いのではないでしょうか。
それは自然なことで、このようなリターン系の商品を出す保険会社は、この手の商品の役割について、かなり割り切った考え方をしているようです。
販売側の評判
リターン系の商品は、プロ目線では評判が分かれますが、割り切った見方をする人が多いです。
あんしん生命のとあるプロモーター(代理店営業担当、現役)曰く、これらのリターン系の医療保険は「ドアノック商品」ということです。
つまり保険に関心のないお客様の興味を惹き、話を聞く姿勢を作るための商品なのです。
もし「使わなかった保険料が返ってきたら嬉しくないですか?」というトークはいかにも魅力的ですから、こうして興味を持ってもらい、本当に提案したい商品を提案するチャンスをうかがうのです。
だから本当に魅力的な商品であるかどうかは関係ないのです。
保険会社としても、商談の入り口を設定できればそれでよく、できれば契約者にリターンが生じるような商品は売りたくないのが本音です。
契約者側の評判
契約者としてみると、全額でないことは理解したうえで、それでも「保険料の一部が返ってくる」というのは嬉しいようです。
お客様の心理として「得をしたい」よりも「損をしたくない」という心理が強いため、すこしでも損をしないタイプの保険は好感を持たれるようです。
ソニー生命「メディカルベネフィットリターン」と競合商品を3点で比較
メディカルベネフィットリターンのメリットとデメリットが分かったところで、合商品との比較をしてみましょう。
論点は、1)保障内容、2)健康還付給付金(と同種の給付金)の受け取り時期、3)返戻率の3点に絞ります。
1) 保障内容
保障内容で差がつくのは主に特約部分で、主契約の「入院1日○○○○円」という機能は皆同じです。
ここでは、代表的な特約をみていきます。
入院一時金特約
「メディカルベネフィットリターン」と「メディフィットリターン(メディケア生命)」は、「入院一時金特約」が付加できる点は評価できます。
保障として1日当たり5000円の入院保険は出ますが、それではカバーしきれない部分が必ず出てきてしまいます。
そんな時に一時金があれば、食費や交通費、日用品の購入に回すことが出来ます。
ひと昔前まで、入院期間は平均して30日程度ありましたが、近年は医療技術の進歩や入院短期化のベッド数が足りないという問題を背景に、入院期間が15日前後まで短くなりました。
但し入院期間が短くなったからといっても「完治」していない場合は、働くこともできません。
そんな時に「入院一時金特約」を付けておけば、すべてカバーすることはできませんが、経済的には少しでも楽になります。
メディカルベネフィットリターンは、こうしたトレンドを押さえているといえるでしょう。
特定疾病(三大疾病)一時金特約
特定疾病とは、がん・脳梗塞・急性心筋梗塞を指しますが、保障範囲については各社定義が異なります。
パンフレットを注意して見ると「脳卒中」なのか「脳血管疾患」なのか異なりますし、「急性心筋梗塞」なのか「心疾患」なのか異なります。
そして、いずれも後者の方が範囲は広いです。
特定疾病一時金特約の範囲は「メディカルベネフィットリターン(ソニー生命)」と「メディフィットリターン(メディケア生命)」が「ガン・急性心筋梗塞・脳卒中」なのに対し、「メディカルキットR(東京海上日動あんしん生命)」が「ガン・心疾患・脳血管疾患」とされ、保障範囲が広く設定されています。
ちなみに「メディカルベネフィットリターン(ソニー生命)」は、主契約と特約で特定疾病の範囲が異なり、主契約(1日当たりの入院給付金)は「がん・脳血管疾患・心疾患」と範囲が広い方ので、これらの病気を原因として入院した場合、入院給付金の給付日数に上限はありません。
特定疾病保険料支払免除特約
医療保険に限らず生命保険では、三大疾病に罹ったらそれ以降の保険料の支払いが免除される特約が付加できる場合があります。
これはリターン系の商品は登場以来長らく、この特約が付加できませんでした。
「メディカルキットR(東京海上日動あんしん生命)」だけが2018年度から、支払いが免除される特約の付加が可能になりましたが、他の2商品にはこの特約が付加できません。
支払いが免除されるありがたさというのは、三大疾病に罹ったときによくわかります。
例えばがん患者は、死亡せずとも6割以上の患者が収入を4割程度減少させています。
つまり職業生活にも支障をきたしているのです。
前述の通りリターン系の商品は、保険料の終身払いが基本ですから、三大疾病罹患後にも一生涯にわたって保険料を支払っていくとすると、生活をかなり圧迫することが予想されますね。
支払いが免除されるという尺度から見ると、明らかに「メディカルキットR(東京海上日動あんしん生命)」が優位でしょう。
2) 返戻率
これは非常に単純で、メディフィットリターン(メディケア生命)は主契約の保険料の最大105%が返ってくるように特約で契約できます。
つまり、主契約の類型保険料を100万円支払ったのであれば、最大105万円が返ってくるようにできます。
メディカルベネフィットリターンもメディカルキットRも、このような特約は付加できず、主契約保険料の100%が限界です。
3) 健康還付給付金の受け取り年齢
保険会社 | 商品名 | 健康還付給付金の受取時期 |
ソニー生命 | メディカルベネフィットリターン | 50~80歳で5歳刻み |
メディケア生命 | メディフィットリターン(返戻率105%) | 65~80歳で5歳刻み |
メディフィットリターン(返戻率100%) | 60~80歳で5歳刻み | |
東京海上日動あんしん生命 | メディカルキットR | 60歳 or 70歳 |
メディカルキットRは60歳か70歳の2者択一なので、選択範囲が狭くなります。
一方、メディカルベネフィットリターンとメディフィットリターンは、加入年齢によって前後しますが、5歳刻みで細かく設定できます。
こうしてみると、メディカルベネフィットリターン(ソニー生命)の選択範囲が比較的広く、より柔軟なプラン設計が可能だと見ることができます。
ソニー生命「メディカルベネフィットリターン」と外貨建て保険で運用シュミレーション
資産運用の効果を求めて、保険料を可能な限り回収したいのなら、以下のようなプランをお勧めいたします。
上のようなシュミレーションのプランであれば、医療保険の持つ特性は全て押さえたうえで、これらのメリットがあります。
- 外貨建ての高い返戻率で、保険料をほぼ回収でき、場合によっては黒字化する
- 解約しなければ、死亡保障が終身でついてくる
- 三大疾病以外にも、要介護2または障害等級2級から一時金が受け取れる
などのメリットが得られます。
毎月の保険料負担がやや大きくなりますが、将来全額回収できる可能性があるのなら、決して法外に高いわけではありません。
個人差はありますが、30歳男性の医療保険の保険料が4,000円程度と仮定すると、65歳までの35年間で168万円支出することになります。
これが医療保険の支出ですが、上のプランでは、三井生命のドリームクルーズワイドは65歳時点で430万円ほどリターンがあります。
つまり、医療保険の保険料を差し引いても262万円(※)は「黒字」が保たれる計算です。
もう一つの方法として、同じソニー生命の運用型の生命保険と一緒にメディカルベネフィットリターンを組み合わせる方法も考えられます。
こちらの記事も参考にして下さい。
ソニー生命「メディカルベネフィットリターン」はお得なの?
生命保険というものを「コスパ」の尺度で考えるなら、「保険料をいくら支払って、いくらリターンがあるか?」が最も重要になります。
そうであれば、先ほど提案したように外貨建て終身保険+その特約で死亡保障と各種の一時金を確保したうえで「メディカルベネフィットリターン」に加入するのがおすすめです。
またメディカルベネフィットリターンには、商品の特性に合わせて加入目的、健康還付給付金を受け取るタイミングを決めるべきです。
メディカルベネフィットリターンの特性は「主契約部分の使わなかった保険料が、一定の年齢に達したときに返ってくる」
なので特約は一切付加せず主契約にだけ加入すれば、何事もなければ保険料は全額返ってきます。
そこでメディカルベネフィットリターンは健康還付給付金を受け取るタイミングが重要になってきます。
理想は70歳です。
というのも、現行の健康保険の制度上、70歳からは医療費の自己負担割合が下がり始めるからです(70~75歳は2割、75歳以上は1割)。
また70歳以降であれば、健康還付給付金でその後10年間(80歳まで)の保険料を払ったとしても、それまで健康であり続ければ、保険料はそのまま返ってくるから、大きな損失にはなりません。
ソニー生命の「メディカルベネフィットリターン」まとめ
ここまでで、メディカルベネフィットリターンの基本的な仕組みと評判、他社商品との比較と資産運用シュミレーションのプラン例をご覧いただきました。
生命保険は、複数の商品を組み合わせて1つのプランを作るのが通常なので、1つの商品だけを見て良し悪しを判断するのは非常に危険です。
検討する際は、ご自身で考えてわからないこともきっと多いと思います。
そうした場合は、お近くのFPさんや保険ショップの無料相談を活用しましょう。